GMAP会計(アカウンティング)試験対策:ひっかけポイントと重要論点を完全解説

はじめに

グロービスが実施する**GMAP(Graduate Management Admission Program)は、MBAや経営大学院への入学適性を測る試験です。その中でもアカウンティング(会計)**は、苦手意識を持つ方が多い反面、対策を立てれば得点しやすい科目でもあります。

本記事では、GMAP会計で問われる重要論点と、受験者が陥りやすいひっかけポイントを具体例とともに徹底解説します。


GMAP会計の出題範囲と配点イメージ

pie title GMAP会計 出題領域のイメージ "財務諸表の読み方・構造" : 30 "財務分析(比率分析)" : 25 "損益分岐点・管理会計" : 25 "キャッシュフロー計算書" : 15 "その他(連結・税務等)" : 5
出題領域主なテーマ
財務諸表BS・PL・CFの構造と関係性
財務分析収益性・安全性・効率性指標
管理会計CVP分析、変動費・固定費
CF計算書間接法・直接法、営業CF
その他のれん、減価償却、税効果

Part 1:財務諸表の基礎と構造

1-1. 貸借対照表(BS)の構造

貸借対照表は「ある時点のスナップショット」です。左右が必ず一致するという大原則を押さえてください。

【貸借対照表の構造】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  資産(Assets)         負債(Liabilities)
                         ─────────────────
  流動資産               流動負債
  ・現金・預金           ・買掛金
  ・売掛金               ・短期借入金
  ・棚卸資産(在庫)      ・未払金
  ─────────────           ─────────────────
  固定資産               固定負債
  ・有形固定資産          ・長期借入金
  ・無形固定資産          ・社債
  ・投資その他の資産
                         ─────────────────
                         純資産(Net Assets)
                         ・資本金
                         ・利益剰余金

  資産合計 = 負債合計 + 純資産合計
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

⚠️ ひっかけポイント①:流動・固定の分類基準

1年基準(ワン・イヤー・ルール)正常営業循環基準 の2つがあります。

  • 売掛金・棚卸資産は、回収まで1年超かかっても正常営業循環基準により流動資産
  • 長期貸付金は1年以内に回収予定でも区分に注意が必要

例題:商品を1年半のローンで販売した場合の売掛金の分類は? → 流動資産(正常営業循環基準が適用されるため)


1-2. 損益計算書(PL)の構造

PLは「一定期間のフロー(流れ)」を示します。

【損益計算書の構造(5段階の利益)】

  売上高
  − 売上原価
  ──────────────────────────
  ① 売上総利益(粗利)
  − 販売費及び一般管理費(販管費)
  ──────────────────────────
  ② 営業利益     ← 本業の儲け
  + 営業外収益(受取利息等)
  − 営業外費用(支払利息等)
  ──────────────────────────
  ③ 経常利益     ← 通常の事業活動の儲け
  + 特別利益(固定資産売却益等)
  − 特別損失(減損損失等)
  ──────────────────────────
  ④ 税引前当期純利益
  − 法人税等
  ──────────────────────────
  ⑤ 当期純利益

⚠️ ひっかけポイント②:5段階の利益の使い分け

利益何を示すか使われる指標
売上総利益商品・製品の競争力売上総利益率
営業利益本業の実力ROA計算に使う場合も
経常利益財務活動含む通常収益力期間比較によく使用
当期純利益最終的な利益ROE, EPS

頻出ひっかけ:「本業の収益力を示す利益は?」→ 営業利益(経常利益ではない)


Part 2:財務分析(比率分析)

2-1. 収益性指標

ROE(自己資本利益率)とROA(総資産利益率)

ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100(%)

ROA = 当期純利益(または営業利益)÷ 総資産 × 100(%)

⚠️ ひっかけポイント③:ROEのデュポン分解

ROEは以下の3要素に分解できます:

ROE = 売上高純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ
    (収益性)      (効率性)       (安全性の逆)

ROE = (純利益/売上) × (売上/総資産) × (総資産/自己資本)

ひっかけ例:ROEが高い企業が必ずしも優良企業とは限らない → 借入(レバレッジ)を増やすだけでROEは上昇する → 自己資本が少ない(債務超過リスクあり)企業でも数値上ROEが高くなる


2-2. 安全性指標

流動比率・当座比率

流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100(%)
          → 目安:200%以上が望ましい

当座比率 = 当座資産 ÷ 流動負債 × 100(%)
          → 目安:100%以上が望ましい
          ※当座資産 = 流動資産 − 棚卸資産 − 前払費用

⚠️ ひっかけポイント④:在庫(棚卸資産)の扱い

当座比率では棚卸資産を除くのは、在庫は現金化に時間がかかるためです。

例題:流動比率は200%だが当座比率が60%の企業の状態は? → 在庫が積み上がっており、即時の支払能力に課題がある可能性

自己資本比率・負債比率

自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資産 × 100(%)

負債比率(D/E比率)= 有利子負債 ÷ 自己資本 × 100(%)

2-3. 効率性指標(回転率・回転日数)

売上債権回転日数 = 売掛金 ÷ (売上高 ÷ 365)(日)
棚卸資産回転日数 = 棚卸資産 ÷ (売上原価 ÷ 365)(日)
買入債務回転日数 = 買掛金 ÷ (売上原価 ÷ 365)(日)

キャッシュコンバージョンサイクル(CCC)

graph LR A[仕入れ・支払] -->|買入債務回転日数| B[在庫保有] B -->|棚卸資産回転日数| C[販売・売上計上] C -->|売上債権回転日数| D[現金回収] style A fill:#ff6b6b,color:#fff style D fill:#51cf66,color:#fff
CCC = 売上債権回転日数 + 棚卸資産回転日数 − 買入債務回転日数

CCCが短いほど資金効率が良い企業です。

⚠️ ひっかけポイント⑤:棚卸資産回転日数の分母

  • 売上債権回転日数の分母は「売上高」
  • 棚卸資産・買入債務回転日数の分母は「売上原価」

この違いを混同する受験者が多いため要注意。


Part 3:管理会計(CVP分析)

3-1. 変動費・固定費の分解

費用特徴
変動費売上(生産量)に比例して増減材料費、外注費、販売手数料
固定費売上に関係なく一定家賃、正社員人件費、減価償却費
準変動費固定部分+変動部分電気代、パート人件費
貢献利益(限界利益)= 売上高 − 変動費
貢献利益率 = 貢献利益 ÷ 売上高
営業利益 = 貢献利益 − 固定費

3-2. 損益分岐点(BEP)の計算

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 貢献利益率

損益分岐点販売数量 = 固定費 ÷ (単価 − 単位変動費)
graph TD A["売上高ライン(傾き=1)"] --- E[損益分岐点] B["総費用ライン(固定費+変動費)"] --- E E --- C[利益ゾーン:売上高 > 総費用] E --- D[損失ゾーン:売上高 < 総費用] style C fill:#51cf66,color:#fff style D fill:#ff6b6b,color:#fff style E fill:#ffd43b,color:#000

⚠️ ひっかけポイント⑥:損益分岐点比率と安全余裕率

損益分岐点比率 = 損益分岐点売上高 ÷ 実際売上高 × 100(%)
安全余裕率   = 1 − 損益分岐点比率(%)
             = (実際売上高 − 損益分岐点売上高)÷ 実際売上高

損益分岐点比率が低いほど安全(売上が落ちても赤字になりにくい)

例題:固定費1,000万円、貢献利益率40%、実際売上高3,000万円のとき

  • 損益分岐点売上高 = 1,000 ÷ 0.4 = 2,500万円
  • 損益分岐点比率 = 2,500 ÷ 3,000 = 約83%
  • 安全余裕率 = 1 − 0.83 = 約17%

3-3. 目標利益達成のための売上高

目標売上高 = (固定費 + 目標営業利益)÷ 貢献利益率

⚠️ ひっかけポイント⑦:税引後目標利益の場合

税引後の利益目標が与えられた場合、税引前利益に換算する必要があります。

税引前目標利益 = 税引後目標利益 ÷ (1 − 実効税率)

Part 4:キャッシュフロー計算書(CF計算書)

4-1. CF計算書の3区分

graph LR A[営業活動CF
本業でのキャッシュ創出] --> D[現金増減] B[投資活動CF
設備投資・回収] --> D C[財務活動CF
借入・返済・配当] --> D style A fill:#4c9be8,color:#fff style B fill:#f59e0b,color:#fff style C fill:#10b981,color:#fff
CF区分プラスの意味マイナスの意味
営業CF本業が稼いでいる ✅本業が赤字・運転資本増大
投資CF資産売却・回収積極的な設備投資 ✅(成長期)
財務CF借入・増資借入返済・配当支払 ✅(安定期)

⚠️ ひっかけポイント⑧:「優良企業」のCFパターン

成熟した優良企業の典型的なCFパターン:

  • 営業CF:プラス(大)
  • 投資CF:マイナス(継続投資)
  • 財務CF:マイナス(借入返済・配当)

4-2. 間接法による営業CFの計算

GMAPでは間接法の仕組みを理解しているかが問われます。

営業CF(間接法)

  当期純利益
  + 減価償却費          ← 非現金費用を戻す
  ± 運転資本の変動
    − 売掛金の増加(現金未回収が増えた)
    − 棚卸資産の増加(現金で仕入れたが未販売)
    + 買掛金の増加(現金未払いが増えた)
  = 営業CF

⚠️ ひっかけポイント⑨:売掛金の増減と符号

「売掛金が増加」した場合、営業CFにはマイナスで加算します。

理由:売上は計上されたが現金はまだ入ってきていないため

項目の変化営業CFへの影響
売掛金 増加マイナス
売掛金 減少プラス
棚卸資産 増加マイナス
買掛金 増加プラス
買掛金 減少マイナス

4-3. フリーキャッシュフロー(FCF)

FCF = 営業CF − 投資CF(設備投資)
    = 営業CF − CAPEX(Capital Expenditure)

⚠️ ひっかけポイント⑩:FCFとEBITDA

  • EBITDA = 営業利益 + 減価償却費 (Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization)
  • FCFとEBITDAは似ているが異なる概念
  • EBITDAは「税・利息・減価償却前利益」で、国際比較やM&Aで使われる

Part 5:減価償却と固定資産

5-1. 定額法・定率法

定額法:毎期均等に費用化
  年間償却額 = (取得原価 − 残存価額)÷ 耐用年数

定率法:残存簿価に一定率をかけて費用化
  年間償却額 = 期首簿価 × 償却率
  → 初期に多く、後年になるほど少ない

⚠️ ひっかけポイント⑪:減価償却の現金支出

**減価償却費は現金支出を伴わない費用(非現金費用)**です。

  • PLには費用として計上される → 営業利益を下げる
  • BSでは固定資産の簿価を下げる
  • CFでは現金流出なし(間接法では加算して戻す)

よくある誤解:「減価償却費が大きい企業はキャッシュが少ない」→ 誤り むしろ大きな減価償却費は節税効果CF確保につながる


5-2. のれんの処理

のれん = 買収価格 − 被買収企業の純資産の時価
基準処理方法
日本基準20年以内に規則的に償却(PLに費用計上)
IFRS(国際基準)原則償却なし(減損テストのみ)

⚠️ ひっかけポイント⑫:のれんと会計基準

GMAPでは「日本基準とIFRSの違い」が問われることがあります。

  • 日本基準:のれん定期償却 → 毎期PLに費用が出る
  • IFRS:償却なし → 減損が発生するまでBSに計上し続ける

Part 6:よく出る総合的ひっかけ問題

ひっかけポイント⑬:利益があるのに資金繰りが苦しい

「黒字倒産」の仕組みを理解しているかを問う問題です。

graph TD A[売上高増加] --> B[売掛金・在庫増加] B --> C[現金流出増加] C --> D[資金繰り悪化] A --> E[PLは黒字] D --> F[黒字倒産リスク] style F fill:#ff6b6b,color:#fff style E fill:#51cf66,color:#fff

重要:利益(PL)と現金(CF)は別物。急成長企業や季節変動の大きい企業で起きやすい。


ひっかけポイント⑭:ROAの分母

ROAの計算式には複数のバリエーションがあります:

① ROA = 当期純利益 ÷ 総資産
② ROA = 営業利益 ÷ 総資産
③ ROA = (当期純利益 + 支払利息 × (1−税率))÷ 総資産(最も厳密)

GMAPでは問題文の指示に従うことが重要です。どの定義を使うかを必ず確認してください。


ひっかけポイント⑮:在庫評価方法の違いによる利益への影響

物価が上昇している場合:

評価方法期末在庫の評価売上原価利益
先入先出法(FIFO)高い(新しい仕入価格)低い高い
後入先出法(LIFO)※低い(古い仕入価格)高い低い
平均法中間中間中間

※ LIFOは日本基準では廃止済み、IFRSでも認められていませんが概念として問われることがある。


ひっかけポイント⑯:特別利益・特別損失とは「特別」か

「特別」というのは金額的な重要性ではなく、臨時性・異常性を指します。

  • 毎年発生する費用 → 特別損失ではない(営業外費用または販管費)
  • 工場火災による損失 → 特別損失✅(臨時的・異常的)
  • 本社ビルの売却益 → 特別利益✅(通常業務外)

試験直前チェックリスト

□ BSの流動・固定の分類基準(1年基準 vs 正常営業循環基準)
□ PLの5段階の利益(売上総利益→営業利益→経常利益→税前→純利益)
□ ROEのデュポン分解(収益性×効率性×レバレッジ)
□ 当座比率の分子から棚卸資産・前払費用を除く理由
□ CCC(キャッシュコンバージョンサイクル)の計算
□ 損益分岐点の計算と安全余裕率
□ 間接法CF計算書:売掛金増加はマイナス、買掛金増加はプラス
□ 減価償却費は非現金費用(CF計算書では加算して戻す)
□ のれん:日本基準(償却あり)vs IFRS(償却なし)
□ 黒字倒産:利益(PL)と現金(CF)は別物
□ 在庫評価:物価上昇時はFIFOで利益が高くなる

まとめ

GMAP会計で高得点を狙うには、公式の暗記ではなく、「なぜそうなるか」の理解が鍵です。

特に頻出のひっかけポイントをまとめると:

  1. 流動・固定の分類:正常営業循環基準を優先
  2. 営業利益 vs 経常利益:本業の実力は「営業利益」
  3. ROEのレバレッジ効果:高ROEが必ずしも優良企業ではない
  4. CF計算書の符号:売掛金増加=マイナス(暗記ではなく理由から理解)
  5. 減価償却:現金支出なし・BS簿価を下げ・PLに費用計上
  6. 損益分岐点比率:低いほど安全

試験本番では時間配分に気をつけながら、計算問題は途中式を丁寧に書いて確認しましょう。


本記事はGMAP試験対策の学習支援を目的として作成しています。試験内容は変更される場合があるため、最新の公式情報もご確認ください。