Power Apps の AI 機能完全ガイド:プロンプト指示でアプリを自動生成する方法

はじめに

Microsoft Power Apps に搭載された Copilot(AI)機能を使えば、コードを書かずとも日本語のプロンプト(指示文)を入力するだけでビジネスアプリを自動生成できます。2023年以降、この機能は急速に進化し、現在では以下のような作業を AI が自動でこなします。

  • アプリ画面のレイアウト生成
  • Dataverse テーブルの自動設計
  • フォーム・ギャラリーの自動配置
  • 数式(Power Fx)の自動補完

本記事では、Power Apps の AI 機能の種類と、各機能の具体的な利用方法をステップバイステップで解説します。


Power Apps の主な AI 機能一覧

graph TD A[Power Apps AI機能] --> B[Copilot でアプリを作成] A --> C[Copilot コントロール] A --> D[AI Builder] A --> E[数式バーの Copilot] A --> F[Ideas 機能] B --> B1[自然言語でアプリ全体を生成] C --> C1[アプリ内にチャットボットを埋め込み] D --> D1[画像認識・文書処理・予測モデル] E --> E1[Power Fx 数式を自然言語で生成] F --> F1[データに基づく数式候補を提案]
機能概要必要ライセンス
Copilot でアプリ作成指示文からアプリを丸ごと生成Power Apps(標準)
Copilot コントロールアプリ内に AI チャットを埋め込みPower Apps + Copilot
AI Builder文書解析・画像認識・予測AI Builder アドオン
数式バーの CopilotPower Fx 数式を自動生成Power Apps(標準)
Ideasデータに最適な数式を提案Power Apps(標準)

機能① Copilot でアプリを作成(自然言語からアプリ生成)

最も注目度が高い機能です。「どんなアプリを作りたいか」を日本語で入力するだけで、画面・フォーム・データテーブルが自動生成されます。

利用手順

Step 1: Power Apps ホームから開始

  1. https://make.powerapps.com にアクセス
  2. ホーム画面の 「Copilot でアプリを作成する」 セクションを確認
  3. テキストボックスに作りたいアプリの説明を入力

Step 2: プロンプトを入力

プロンプト例(日本語で入力可能):

社員の有給休暇申請を管理するアプリを作ってください。
申請者名、申請日、休暇開始日、休暇終了日、理由、
承認ステータス(申請中/承認済/却下)を管理できるようにしてください。
顧客からの問い合わせを記録するアプリ。
顧客名、連絡先、問い合わせ内容、担当者、
ステータス(未対応/対応中/完了)、優先度(高/中/低)を管理する。

Step 3: AI がテーブル設計を提案

入力後、Copilot が Dataverse テーブルの列構成 を自動提案します。

提案されたテーブル例(有給休暇申請):
- 申請者名(テキスト)
- 申請日(日付)
- 休暇開始日(日付)
- 休暇終了日(日付)
- 理由(テキスト)
- ステータス(選択肢: 申請中, 承認済, 却下)
- 承認者(参照)

この段階でチャット形式で 列の追加・変更・削除 を指示できます。

追加指示の例:

「添付ファイル」列も追加してください
「休暇の種類」として「有給/半日有給/特別休暇」の選択肢を追加

Step 4: アプリを作成

テーブル設計が確定したら 「アプリを作成する」 ボタンをクリック。数十秒で以下が自動生成されます。

  • 一覧画面(ギャラリー): データを一覧表示
  • 詳細画面: 各レコードの詳細表示
  • 編集画面: データ入力・編集フォーム

Step 5: 生成後もチャットでカスタマイズ

アプリ生成後も、画面右側の Copilot パネル からチャットで修正を指示できます。

カスタマイズ指示の例:

ステータスが「申請中」のものを一覧の上部に表示してください
ギャラリーに申請日も表示してください
承認済みのレコードは緑色で表示してください

機能② 数式バーの Copilot(Power Fx 自動生成)

Power Apps の数式(Power Fx)を自然言語で生成する機能です。従来は Excel 関数に似た構文を覚える必要がありましたが、Copilot を使えば日本語で説明するだけで数式が自動生成されます。

利用手順

Step 1: 数式バーで Copilot を起動

  1. アプリ編集画面でコントロール(ボタンなど)を選択
  2. 数式バー左端の きらきらアイコン(✨) をクリック
  3. Copilot パネルが表示される

Step 2: 自然言語で指示

入力例:

ギャラリーに表示されているアイテムを申請日の新しい順に並び替える

生成される数式例:

SortByColumns(Filter(休暇申請, ステータス <> "削除済"), "申請日", Descending)

その他の指示例:

指示生成される数式のイメージ
「テキスト入力が空の場合はボタンを無効にする」IsBlank(TextInput1.Text)
「今日の日付から7日後を表示する」DateAdd(Today(), 7, Days)
「現在のユーザーのメールアドレスを取得する」User().Email
「選択肢の値が高の場合は赤、中は黄、低は緑で表示する」Switch(ThisItem.優先度, "高", Red, "中", Yellow, "低", Green)

機能③ AI Builder(高度な AI モデル活用)

AI Builder は、より高度な AI 処理をノーコードで Power Apps に組み込める機能です。

graph LR A[AI Builder モデル種類] --> B[文書処理] A --> C[テキスト分類] A --> D[画像認識] A --> E[予測モデル] A --> F[名刺リーダー] A --> G[感情分析] A --> H[請求書処理] B --> B1[契約書・帳票からデータ抽出] C --> C1[問い合わせ内容を自動分類] D --> D1[商品の欠陥検知など] E --> E1[チャーン予測・売上予測] F --> F1[名刺写真から連絡先を登録] H --> H1[請求書から金額・日付を自動取得]

利用シナリオ例:名刺読み取りアプリ

実現したいこと: スマートフォンで名刺を撮影し、連絡先情報を自動的に Dataverse に保存する

手順概要

  1. Power Apps でカメラコントロールを追加
  2. AI Builder の 「名刺リーダー」 コントロールを追加
  3. 撮影ボタンのロジックに以下を記述(Copilot で生成可能):
// カメラで撮影した画像をAI Builderで解析
Set(varBusinessCard, BusinessCard.Photos);
AIBuilderModel.Predict(varBusinessCard)
  1. 解析結果をフォームに自動入力:
// AI解析結果をDataverseに保存
Patch(連絡先,
  Defaults(連絡先),
  {
    氏名: BusinessCardReader1.FullName,
    会社名: BusinessCardReader1.CompanyName,
    メール: BusinessCardReader1.Email,
    電話番号: BusinessCardReader1.MobilePhone
  }
)

利用シナリオ例:請求書処理アプリ

実現したいこと: 請求書の PDF をアップロードすると、金額や支払期日を自動抽出して承認フローに送る

  1. ファイル添付コントロールでPDFをアップロード
  2. AI Builder 「請求書処理」 で解析
  3. 抽出したデータを Dataverse に保存
  4. Power Automate で承認メールを送信

機能④ Copilot コントロール(アプリ内 AI チャット)

作成したアプリの中に AI チャットボットを埋め込む機能です。Dataverse や SharePoint のデータに基づいた Q&A ができます。

利用手順

  1. アプリ編集画面で 「挿入」「AI」「Copilot」 を選択
  2. コントロールの データソース に社内ナレッジの SharePoint サイトや Dataverse を指定
  3. アプリを公開するとユーザーが自然言語で質問できる

活用例:

  • 社内 FAQ を SharePoint に格納 → アプリ内で「有給申請の手順を教えて」と聞けば自動回答
  • 製品カタログを Dataverse に格納 → 営業担当が「A製品の最新価格は?」と質問

具体的な活用シナリオ集

シナリオ 1: 設備点検アプリ(現場向け)

プロンプト例:

工場の設備点検記録を管理するモバイルアプリを作成してください。
設備名、点検日、点検者、点検結果(正常/要注意/要修理)、
備考、写真添付ができるようにしてください。

生成されるアプリの特徴:

  • モバイル対応のギャラリー一覧
  • カメラコントロール付きの入力フォーム
  • 要修理フラグのある設備を赤くハイライト

シナリオ 2: 在庫管理アプリ(中小企業向け)

プロンプト例:

小売店の在庫管理アプリを作成してください。
商品名、SKU、現在在庫数、発注点(在庫がこの数を下回ったら発注)、
単価、カテゴリを管理できるようにしてください。
在庫が発注点を下回った商品は一覧で目立つように表示してください。

シナリオ 3: 社内申請ワークフロー(人事・総務向け)

プロンプト例:

備品購入申請アプリを作ってください。
申請者、申請日、品名、数量、単価、合計金額(自動計算)、
購入理由、ステータス(申請中/承認済/却下)を管理します。
合計金額が5万円以上の場合は「要部長承認」と表示してください。

追加で Copilot に指示:

承認済みボタンを押したときに Power Automate フローを呼び出す処理を追加してください
合計金額 = 数量 × 単価 の自動計算を追加してください

プロンプトを書くコツ

より精度の高いアプリを生成させるためのプロンプトのコツを紹介します。

graph TD A[良いプロンプトの要素] --> B[目的・用途を明確に] A --> C[管理する項目を具体的に列挙] A --> D[データ型のヒントを含める] A --> E[表示・動作の条件を記述] A --> F[ユーザー像を記述] B --> B1["「〇〇を管理するアプリ」"] C --> C1["「〇〇、△△、□□を管理」"] D --> D1["「日付」「選択肢(A/B/C)」「数値」"] E --> E1["「〇〇の場合は赤で表示」"] F --> F1["「モバイルで現場担当者が使う」"]

良いプロンプトの例

【目的】営業チームが顧客訪問記録を管理するモバイルアプリを作成してください。

【管理する項目】
- 顧客名(テキスト)
- 訪問日(日付)
- 担当営業(ドロップダウン)
- 訪問目的(選択肢: 新規開拓/フォローアップ/クレーム対応/契約更新)
- 商談金額(数値)
- 次回アクション(テキスト)
- 次回予定日(日付)
- 優先度(選択肢: 高/中/低)

【表示ルール】
- 優先度「高」は赤、「中」は黄色、「低」は緑で表示
- 次回予定日が今日以前のものは一覧の上部に表示
- 商談金額の合計をホーム画面に表示

【利用環境】スマートフォン(iOS/Android)でフィールド担当が使用

よくある失敗パターン

失敗パターン改善方法
「良いアプリを作って」(曖昧すぎる)目的・項目・条件を具体的に記述する
一度に複数の複雑な要件を詰め込むまず基本的なアプリを生成し、段階的に追加指示する
技術的な指示をする(「ギャラリーのItems プロパティを…」)ビジネス目線で「〇〇が見たい」「〇〇できるようにしたい」と伝える
日本語と英語を混在させるどちらかに統一する(日本語推奨)

Copilot 機能の有効化確認

Copilot 機能が表示されない場合は、管理者による有効化が必要な場合があります。

Power Platform 管理センターでの確認手順

  1. https://admin.powerplatform.microsoft.com にアクセス
  2. 「設定」「テナント設定」 を選択
  3. 「Copilot」 セクションを確認
  4. 「Power Apps でユーザーが Copilot を使用できるようにする」 をオン

ライセンス要件

機能必要ライセンス
Copilot でアプリ作成Microsoft 365 E3/E5 または Power Apps Premium
数式バーの CopilotPower Apps(標準)
AI BuilderAI Builder アドオン(月額制)
Copilot コントロールPower Apps + Microsoft Copilot Studio

まとめ

Power Apps の AI 機能を活用することで、開発スキルがなくても実用的なビジネスアプリを短時間で作成できます。

機能向いているシーン
Copilot でアプリ作成ゼロから新しいアプリを作りたいとき
数式バーの Copilot既存アプリに条件分岐や計算ロジックを追加したいとき
AI Builder文書処理・画像認識など高度な AI 処理が必要なとき
Copilot コントロールアプリ内に社内ナレッジの Q&A 機能を追加したいとき

まずは 「Copilot でアプリを作成」 から始めて、生成されたアプリを確認しながらプロンプトの書き方を習得することをおすすめします。AIとの対話形式でアプリを育てていく感覚で取り組むと、短期間でも業務に役立つアプリを作成できます。


参考リンク