SC-200完全ガイド(前編):Microsoft Security Operations Analyst試験対策2026 - 試験概要からセキュリティ運用環境・保護設定まで
はじめに
SC-200(Microsoft Security Operations Analyst)は、Microsoftのセキュリティ分野において中核となる認定資格です。クラウドおよびオンプレミス環境でのアクティブな攻撃への迅速な対応、脅威保護の改善提案、組織ポリシー違反の特定など、セキュリティ運用アナリストに求められる実践的なスキルを証明します。
本記事(前編)では、2026年1月22日更新版に対応した試験範囲のうち、**セクション1-2(セキュリティ運用環境の管理、保護と検出の構成)**を詳しく解説します。
後編はこちら: SC-200完全ガイド(後編):インシデント対応・脅威管理編
1. SC-200試験とは - 資格の全体像
1.1 SC-200認定資格の位置づけ
SC-200は、Microsoftセキュリティ認定資格体系においてAssociate(中級)レベルに位置し、実務経験を持つセキュリティ運用アナリストを対象としています。
1.2 取得するメリット
キャリア面でのメリット
- セキュリティ運用アナリストとしての専門スキルの証明
- SOC(Security Operations Center)業務への従事機会の拡大
- 給与・待遇面での優位性
実務面でのメリット
- Microsoft 365 Defender、Sentinel、Defender for Cloudの体系的理解
- KQL(Kusto Query Language)スキルの習得
- インシデント対応能力の向上
- 脅威ハンティング能力の強化
組織面でのメリット
- Microsoftパートナー企業の認定要件を満たす
- セキュリティチームの能力向上
1.3 前提知識と推奨される前提資格
推奨される前提資格
- SC-900: Microsoft Security, Compliance, and Identity Fundamentals
- AZ-900: Microsoft Azure Fundamentals
必要な実務経験
- セキュリティ運用業務の実務経験(6ヶ月以上推奨)
- Microsoft 365、Azure環境の基本的な理解
- ネットワーク、OS、クラウドの基礎知識
2. 試験の基本情報
2.1 試験形式
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 試験番号 | SC-200 |
| 問題数 | 40-60問(形式により変動) |
| 試験時間 | 120分(一部ケーススタディ含む) |
| 問題形式 | 単一選択、複数選択、ケーススタディ、ドラッグ&ドロップ |
| 合格基準 | 700点以上(1000点満点) |
| 受験方式 | オンライン監督試験またはテストセンター |
| 試験言語 | 英語、日本語、中国語(簡体字)など |
| 受験料 | 約21,103円(税抜)※為替レートにより変動 |
2.2 試験範囲と配点比率(2026年1月22日更新版)
| セクション | 配点比率 | 重要度 |
|---|---|---|
| 1. セキュリティ運用環境の管理 | 20-25% | ★★★☆☆ |
| 2. 保護と検出の構成 | 15-20% | ★★★☆☆ |
| 3. インシデント対応の管理 | 25-30% | ★★★★★ |
| 4. セキュリティ脅威の管理 | 15-20% | ★★★★☆ |
最重要セクション: **セクション3(インシデント対応の管理)**が最も配点が高く、実践的なスキルが問われます。
2.3 2026年1月22日更新版の変更点
主な変更点
- Microsoft Security Copilotの追加(インシデント対応セクションに統合)
- Exposure Managementの追加(アセット管理に統合)
- 「管理」および「構成」セクションに軽微な更新
新機能への対応
- GA(一般提供)機能が中心
- 広く使用されているPreview機能も含まれる可能性
3. 試験範囲の詳細解説
3-1. セキュリティ運用環境の管理(20-25%)
このセクションでは、セキュリティ運用の基盤となる環境の構築・管理スキルが問われます。
3-1-1. Microsoft Defender XDR設定の構成
アラートと脆弱性通知ルールの構成
アラート通知の重要性
- SOCチームへの迅速な通知
- 優先度に応じたエスカレーション
- 通知チャネルの適切な設定
構成可能な通知チャネル
- メール通知
- Microsoft Teams統合
- SIEM(Sentinelなど)への転送
- Webhook経由での外部システム連携
実践的な設定例
Microsoft Defender for Endpoint高度な機能の構成
エンドポイントルール設定
1. Attack Surface Reduction(ASR)ルール
- 実行可能コンテンツのブロック
- Office アプリケーションからの子プロセス作成のブロック
- スクリプトの難読化コードの実行ブロック
- PSExec/WMI経由のプロセス作成の制限
ASRルール展開のベストプラクティス
2. エンドポイント検出および応答(EDR)設定
- ブロックモード(EDR in block mode)の有効化
- 自動調査レベルの設定
- ファイル隔離の自動化
自動調査および対応(AIR)機能の管理
AIRの仕組み
Microsoft Defender XDRは、アラートをトリガーとして自動的に調査を開始し、影響範囲を特定、脅威を修復します。
自動化レベルの設定
| レベル | 動作 | 適用シナリオ |
|---|---|---|
| Full(完全) | 脅威を自動的に修復 | 成熟したSOC環境 |
| Semi(半自動) | 主要な脅威のみ自動修復、他は承認待ち | 一般的な組織 |
| No automation(なし) | 調査のみ実行、修復は手動 | 慎重なアプローチが必要な環境 |
AIR管理のポイント
- デバイスグループごとに自動化レベルを設定可能
- 誤検知の傾向を分析し、除外設定を最適化
- 定期的なレビューと調整
自動攻撃中断(Automatic Attack Disruption)の構成
自動攻撃中断とは
ランサムウェアやBEC(Business Email Compromise)などの進行中の攻撃を、AIが自動的に検出し、攻撃チェーンを中断する機能です。
動作の流れ
設定のベストプラクティス
- 本番環境への適用前にパイロット運用
- 誤検知時の迅速な復旧手順の整備
- 自動中断アクションのログ監視
3-1-2. アセットと環境の管理
デバイスグループ、権限、オートメーションレベルの構成
デバイスグループの設計戦略
デバイスグループは、組織の構造、セキュリティ要件、自動化ニーズに応じて設計します。
設計パターン例
権限(RBAC)の設定
| ロール | 権限内容 | 適用対象 |
|---|---|---|
| Security Administrator | 全設定の管理、ポリシー変更 | セキュリティチームリーダー |
| Security Operator | インシデント対応、調査 | SOCアナリスト |
| Security Reader | 読み取り専用 | 監査担当、経営層 |
非管理デバイスの特定と対処
非管理デバイスのリスク
- セキュリティポリシーが適用されていない
- 脆弱性パッチが未適用
- 可視性の欠如
特定方法
- Microsoft Defender for Endpointの検出機能
- ネットワーク上の未登録デバイスを自動検出
- Microsoft Entra ID(旧Azure AD)連携
- 登録済みデバイスと照合
- ネットワークスキャン
- 定期的なネットワークスキャンで未管理デバイスを発見
対処方法
Defender for Cloudによる非保護リソースの検出
非保護リソースとは
- Defender for Cloudエージェントが未インストールのVM
- セキュリティポリシーが適用されていないリソース
- 脆弱性評価が未実施のリソース
検出方法
- Defender for Cloudダッシュボード
- 「Inventory」タブで保護状態を確認
- セキュアスコア
- 推奨事項から非保護リソースを特定
- Azure Resource Graph クエリ
- KQLで非保護リソースを抽出
実践的なKQLクエリ例
// Defender for Cloudエージェント未インストールのVMを検出
SecurityResources
| where type == "microsoft.security/assessments"
| where properties.displayName == "Log Analytics agent should be installed on virtual machines"
| where properties.status.code == "Unhealthy"
| project VMName = properties.resourceDetails.Id, Status = properties.status.code
Microsoft Defender Vulnerability Managementでのリスク端末の特定と修復
Defender Vulnerability Management(DVM)の役割
- 脆弱性の継続的な検出
- リスクベースの優先順位付け
- 修復推奨事項の提供
リスク端末の特定方法
1. エクスポージャースコア
- デバイスごとのリスクを数値化(0-1000)
- 未パッチの脆弱性、不適切な設定、アクティブな脅威を総合評価
2. セキュリティ推奨事項
- CVSSスコア、悪用の有無、影響範囲に基づいた優先順位
3. 脆弱性タイムライン
- CVE(Common Vulnerabilities and Exposures)の発見から修復までの追跡
修復プロセス
修復オプション
- 自動パッチ適用: Windows Update、Intuneポリシー経由
- 構成変更: セキュリティベースラインの適用
- 緩和策: パッチ適用が困難な場合、ASRルールやファイアウォールで対処
- 例外承認: ビジネス上の理由で修復できない場合
Microsoft Defender XDRのExposure Managementによるリスク軽減
Exposure Managementとは
組織全体の攻撃対象領域(Attack Surface)を可視化し、リスクを優先順位付けして軽減する機能です(2026年1月更新版で追加)。
主要機能
1. 攻撃パスの可視化
- 攻撃者が侵入した場合の影響範囲をシミュレーション
- クリティカルアセットへの経路を特定
2. セキュリティイニシアチブ
- リスク軽減のためのアクションプランを自動生成
- 効果の高い対策を優先的に提示
3. セキュリティメトリクス
- エクスポージャーレベルの数値化
- 経時的な改善状況のトラッキング
活用シナリオ
3-1-3. Microsoft Sentinelワークスペースの設計と構成
Microsoft Sentinelワークスペースの計画
ワークスペース設計の選択肢
1. 単一ワークスペース設計
2. 複数ワークスペース設計
設計時の考慮事項
| 要素 | 単一ワークスペース | 複数ワークスペース |
|---|---|---|
| データ主権 | 単一リージョン | リージョン分離可能 |
| コスト | 効率的 | 重複コスト発生 |
| クロスワークスペース分析 | 不要 | 必要(Union、Lighthouse利用) |
| RBAC粒度 | テーブルレベル | ワークスペースレベル |
Microsoft Sentinelロールの構成
組み込みロール
| ロール | 権限内容 | 適用対象 |
|---|---|---|
| Microsoft Sentinel Contributor | 全機能の管理、分析ルール作成、インシデント対応 | SOCアナリスト、セキュリティエンジニア |
| Microsoft Sentinel Responder | インシデント対応のみ(分析ルールの変更不可) | 一次対応担当者 |
| Microsoft Sentinel Reader | 読み取り専用、ダッシュボード閲覧 | 監査担当、経営層 |
| Microsoft Sentinel Automation Contributor | プレイブック(Logic Apps)の管理 | オートメーションエンジニア |
カスタムロールの作成例
| |
Azure RBACロールの指定
Log Analytics Workspaceとの統合
Sentinelは、Log Analyticsワークスペース上���構築されるため、以下のAzure RBACロールも考慮が必要です。
| ロール | 用途 |
|---|---|
| Log Analytics Contributor | ワークスペースの管理、クエリ実行 |
| Log Analytics Reader | ログの読み取り専用 |
リソースレベルとテーブルレベルのRBAC
- リソースレベル: ワークスペース全体へのアクセス制御
- テーブルレベル: 特定のログテーブル(例: SecurityEvent)のみアクセス許可
データストレージ、ログタイプ、ログ保持期間の設計と構成
データストレージ設計
1. ログ取り込み量の見積もり
2. ログタイプの選定
| ログタイプ | 保持期間推奨 | 用途 |
|---|---|---|
| セキュリティイベント(Windows) | 90日以上 | インシデント調査、脅威ハンティング |
| Office 365アクティビティログ | 180日以上 | コンプライアンス、内部不正調査 |
| Azureアクティビティログ | 90日以上 | クラウドリソースの変更追跡 |
| ファイアウォール/プロキシログ | 30-90日 | ネットワーク調査 |
| Syslog(Linux) | 30-90日 | システム調査 |
3. ログ保持期間の最適化
段階的保持戦略
コスト最適化のポイント
- Basic Logs: 調査頻度の低いログを低コストで保存
- Archive: 長期保存が必要なログをアーカイブ化(取り込みコストの約15%)
- データ収集ルール(DCR): 不要なログフィールドを除外
実践的な設定例
3-1-4. Microsoft Sentinelのデータソース取り込み
取り込むデータソースの特定
データソース選定の戦略
1. 必須データソース(優先度: 高)
- Microsoft 365 Defender(Endpoint、Office 365、Identity、Cloud Apps)
- Azure Active Directory(サインインログ、監査ログ)
- Azureアクティビティログ
- Windows Securityイベント(ドメインコントローラー、重要サーバー)
2. 推奨データソース(優先度: 中)
- ファイアウォール(Palo Alto、Cisco、Fortinet等)
- プロキシ/Webゲートウェイ
- VPNログ
- DNSログ
3. オプショナルデータソース(優先度: 低)
- アプリケーションログ
- データベース監査ログ
- IoTデバイスログ
データソース選定のチェックリスト
- MITRE ATT&CKカバレッジ(検出できる攻撃手法の範囲)
- コンプライアンス要件(GDPR、PCI-DSS等)
- コスト対効果(取り込み量vs検出価値)
- 運用負荷(ログの正規化、パーサー開発)
Content Hubソリューションの実装と使用
Content Hubとは
Content Hubは、Sentinelのマーケットプレイスであり、すぐに使えるソリューション(データコネクタ、分析ルール、ワークブック、プレイブック)をパッケージで提供します。
主要なContent Hubソリューション
| ソリューション | 含まれるコンテンツ | 適用シナリオ |
|---|---|---|
| Microsoft 365 | データコネクタ、500+ 分析ルール、ワークブック | Office 365、Teams、Defender統合 |
| Azure Activity | データコネクタ、分析ルール、ワークブック | Azureリソースの監視 |
| Palo Alto Networks | データコネクタ、パーサー、分析ルール | ファイアウォールログ分析 |
| MITRE ATT&CK | ワークブック、ハンティングクエリ | 攻撃手法のカバレッジ分析 |
実装手順
ベストプラクティス
- 全てのルールを有効化せず、組織に適したものを選定
- カスタマイズ前にコピーを作成(アップデート時の上書き防止)
- 定期的にContent Hubの更新を確認
Azureリソース用Microsoftコネクタの構成
主要なMicrosoftコネクタ
1. Microsoft 365 Defender
構成手順
2. Azure Active Directory
3. Azure Activity
4. Microsoft Defender for Cloud
Syslog およびCEF(Common Event Format)イベント収集の計画と構成
Syslog vs CEF
| 形式 | 特徴 | 適用デバイス |
|---|---|---|
| Syslog | 標準的なログ形式、パーサー開発が必要 | Linux、ネットワーク機器 |
| CEF | ArcSightが開発した標準形式、構造化データ | ファイアウォール、IDS/IPS |
Syslog収集の構成
アーキテクチャ
構成手順
| |
Sentinel側の設定
CEF収集の構成
CEF形式の例
構成手順
CEFパーサーのカスタマイズ
// Palo Alto Networks用カスタムパーサー
CommonSecurityLog
| where DeviceVendor == "Palo Alto Networks"
| extend
SourceIP = coalesce(SourceIP, DeviceCustomIPv6Address2),
ThreatName = DeviceCustomString1,
URLCategory = DeviceCustomString4
| project TimeGenerated, SourceIP, DestinationIP, ThreatName, URLCategory
Windows Event Forwarding(WEF)を使用したWindows Securityイベント収集の計画と構成
WEFとは
Windows Event Forwardingは、複数のWindowsデバイスからイベントログを中央のコレクターサーバーに転送する機能です。Sentinelへの取り込み前に、WEFで集約することでエージェント数を削減できます。
アーキテクチャ
WEF構成手順
1. コレクターサーバーの準備
| |
2. サブスクリプションの作成
| |
| |
3. ソースデバイスの構成
| |
4. Sentinel連携
推奨イベントID
カスタムログテーブルの作成
カスタムログが必要なシナリオ
- サードパーティアプリケーションのログ
- カスタム開発アプリケーション
- 既存コネクタでサポートされていないデータソース
作成方法
1. Data Collection Rule(DCR)を使用した方法(推奨)
| |
構成手順
2. Log Analytics HTTP Data Collector APIを使用した方法
| |
データ取り込みの監視と最適化
監視のポイント
1. 取り込み量の監視
// 日次の取り込み量(GB単位)
Usage
| where TimeGenerated > ago(30d)
| where IsBillable == true
| summarize IngestedGB = sum(Quantity) / 1000 by bin(TimeGenerated, 1d), DataType
| render timechart
2. 取り込み遅延の監視
// データソース別の取り込み遅延
Heartbeat
| extend IngestionDelay = ingestion_time() - TimeGenerated
| summarize avg(IngestionDelay), max(IngestionDelay) by Computer
| where max_IngestionDelay > 5m // 5分以上の遅延
3. コネクタのヘルスチェック
// データコネクタの最終受信時間
union SecurityEvent, Syslog, CommonSecurityLog, AzureActivity
| summarize LastReceived = max(TimeGenerated) by $table
| extend TimeSinceLastEvent = now() - LastReceived
| where TimeSinceLastEvent > 1h // 1時間以上データ受信なし
最適化テクニック
1. 不要なログフィールドの除外
// Data Collection Ruleでの変換例
SecurityEvent
| where EventID in (4624, 4625, 4672) // 必要なイベントIDのみ
| project TimeGenerated, Computer, Account, EventID, LogonType // 必要なフィールドのみ
2. サンプリング
// 高頻度ログのサンプリング(10%のみ取り込み)
CommonSecurityLog
| where DeviceVendor == "Palo Alto Networks"
| where rand() < 0.1 // 10%サンプリング
3. Basic Logsの活用
3-2. 保護と検出の構成(15-20%)
このセクションでは、脅威を未然に防ぎ、検出するための各種ポリシーとルールの構成方法が問われます。
3-2-1. Microsoft Defenderセキュリティテクノロジーでの保護の構成
Microsoft Defender for Cloud Appsポリシー
Defender for Cloud Appsの役割
- SaaS アプリケーションの可視化と制御
- シャドーIT検出
- データ漏洩防止
- 脅威保護
主要なポリシータイプ
1. アクセスポリシー
実践的な設定例
2. アクティビティポリシー
3. ファイルポリシー
設定例
4. 異常検出ポリシー
Microsoft Defender for Office 365ポリシー
Defender for Office 365の役割
- メール経由の脅威(フィッシング、マルウェア)からの保護
- 悪意のあるリンク・添付ファイルの検出
- 内部脅威の検出
主要なポリシー
1. Safe Attachments(安全な添付ファイル)
動作モード
| モード | 動作 | 推奨シナリオ |
|---|---|---|
| Off | スキャンなし | 非推奨 |
| Monitor | スキャンして記録、配信はブロックしない | 影響評価期間 |
| Block | マルウェアを含む添付ファイルをブロック | 標準設定(推奨) |
| Dynamic Delivery | メール本文を先に配信、添付ファイルはスキャン後に配信 | ビジネス継続性重視 |
実践的な設定例
2. Safe Links(安全なリンク)
保護の仕組み
設定項目
3. Anti-phishing(フィッシング対策)
保護レイヤー
偽装保護の設定
4. Anti-spam(スパム対策)
スパムフィルタリングレベル
| レベル | 検出率 | 誤検知率 | 推奨用途 |
|---|---|---|---|
| 1-2 | 低 | 低 | 誤検知を最小化したい組織 |
| 3-4 | 中 | 中 | 標準設定 |
| 5-6 | 高 | 高 | 厳格なセキュリティ要件 |
アクション設定
Microsoft Defender for Endpointセキュリティポリシー(ASRルール含む)
Attack Surface Reduction(ASR)ルール詳細
ASRルールは、一般的な攻撃手法をブロックすることで、攻撃対象領域を縮小します。
主要なASRルール
| ルールID | ルール名 | 効果 |
|---|---|---|
| 56a863a9-875e-4185-98a7-b882c64b5ce5 | Officeアプリによる実行可能コンテンツの作成をブロック | マクロマルウェア対策 |
| 7674ba52-37eb-4a4f-a9a1-f0f9a1619a2c | Officeアプリによる他プロセスへのコード挿入をブロック | プロセスインジェクション対策 |
| be9ba2d9-53ea-4cdc-84e5-9b1eeee46550 | 実行可能ファイルがメールクライアント・Webメール経由で実行されるのをブロック | メール経由のマルウェア対策 |
| 01443614-cd74-433a-b99e-2ecdc07bfc25 | Officeアプリによる子プロセス作成をブロック | マルウェアのダウンローダー対策 |
| 5beb7efe-fd9a-4556-801d-275e5ffc04cc | Officeコミュニケーションアプリによる子プロセス作成をブロック | Outlookマクロ攻撃対策 |
| d4f940ab-401b-4efc-aadc-ad5f3c50688a | Officeマクロからのwin32 API呼び出しをブロック | 高度なマクロ攻撃対策 |
| 92e97fa1-2edf-4476-bdd6-9dd0b4dddc7b | 難読化されたスクリプトの実行をブロック | PowerShell攻撃対策 |
| d3e037e1-3eb8-44c8-a917-57927947596d | WMI経由のスクリプト実行をブロック | WMI悪用対策 |
| 3b576869-a4ec-4529-8536-b80a7769e899 | Officeアプリによる実行可能コンテンツ作成をブロック | VBAマクロ攻撃対策 |
| 75668c1f-73b5-4cf0-bb93-3ecf5cb7cc84 | PSExecおよびWMIコマンドからのプロセス作成をブロック | ラテラルムーブメント対策 |
| 26190899-1602-49e8-8b27-eb1d0a1ce869 | ランサムウェア対策の高度な保護 | ランサムウェア対策 |
| e6db77e5-3df2-4cf1-b95a-636979351e5b | USB経由の信頼されていない署名なしプロセスをブロック | USBマルウェア対策 |
ASRルール展開戦略
段階的展開の4ステップ
除外設定の例
| |
その他のEndpointセキュリティポリシー
1. Endpoint Detection and Response(EDR)
2. Next-generation protection(次世代保護)
3. Web保護
Microsoft Defender for Cloudクラウドワークロード保護
Defender for Cloudの保護対象
| ワークロード | 保護機能 | 検出例 |
|---|---|---|
| Virtual Machines | マルウェア検出、脆弱性評価、JIT VM Access | 暗号通貨マイニング、ルートキット |
| App Service | Web脆弱性スキャン、OSパッチ管理 | SQLインジェクション、XSS |
| SQL Databases | SQL脅威検出、脆弱性評価 | SQLインジェクション試行 |
| Storage Accounts | 異常アクセス検出、マルウェアスキャン | ランサムウェアアップロード |
| Kubernetes | Kubernetes脅威検出、コンテナ脆弱性 | 特権エスカレーション |
| Key Vault | 異常なシークレットアクセス | 大量のシークレット取得 |
主要な保護設定
1. Just-In-Time(JIT) VM Access
動作の仕組み
設定例
2. ファイル整合性監視(FIM)
監視対象
- レジストリキーの変更
- システムファイルの変更
- 構成ファイルの変更
設定例
3. 適応型アプリケーション制御(AAC)
動作の仕組み
3-2-2. Microsoft Defender XDRでの検出の構成
カスタム検出ルールの構成と管理
カスタム検出ルールとは
組み込みの検出ルールでカバーされない、組織固有の脅威を検出するためのKQLベースのルールです。
ルール作成の基本構造
// 例: 夜間の機密ファイルアクセス検出
CloudAppEvents
| where Timestamp > ago(1h)
| where ActionType == "FileAccessed"
| where FileName has_any ("confidential", "secret", "restricted")
| extend Hour = hourofday(Timestamp)
| where Hour >= 22 or Hour <= 6 // 22時~6時
| where AccountObjectId != "exclude-service-account-id"
| summarize FileAccessCount = count() by AccountDisplayName, FileName, bin(Timestamp, 5m)
| where FileAccessCount > 10 // 5分間に10回以上
ルール設定項目
| 項目 | 説明 | 例 |
|---|---|---|
| 名前 | ルールの識別名 | “夜間の異常な機密ファイルアクセス” |
| 頻度 | クエリ実行間隔 | 1時間ごと |
| アラート重大度 | Low/Medium/High | High |
| MITRE ATT&CK | 該当する戦術・技術 | Collection - Data from Information Repositories |
| エンティティマッピング | アラートに紐付けるエンティティ | Account, File |
| アクション | アラート生成、プレイブック実行 | アラート生成 + Teamsに通知 |
KQLクエリのベストプラクティス
// ❌ 悪い例: パフォーマンスが悪い
DeviceEvents
| where Timestamp > ago(1h)
| where FileName contains "powershell" // contains は遅い
| where DeviceName contains "DESKTOP" // 曖昧すぎる条件
// ✅ 良い例: 最適化済み
DeviceEvents
| where Timestamp > ago(1h)
| where FileName in~ ("powershell.exe", "pwsh.exe") // in~ は高速
| where DeviceName startswith "DESKTOP-"
| where ProcessCommandLine has_any ("EncodedCommand", "bypass", "hidden")
| summarize count() by DeviceName, AccountName
| where count_ > 5 // 閾値設定
アラートの管理(チューニング、抑止、相関)
アラートチューニングの目的
- 誤検知(False Positive)の削減
- アラート疲労(Alert Fatigue)の防止
- SOCチームの効率化
1. アラート抑止(Suppression)
抑止ルールの例
設定場所
2. アラート相関
インシデントへの自動グルーピング
Microsoft 365 Defenderは、以下の基準で関連アラートを自動的に1つのインシデントにグループ化します。
カスタム相関ルール
// 例: フィッシングメール受信後のマルウェア実行を1つのインシデントに
EmailEvents
| where ThreatTypes has "Phish"
| join kind=inner (
DeviceEvents
| where ActionType == "ProcessCreated"
| where ProcessCommandLine has_any ("powershell", "cmd")
) on $left.RecipientEmailAddress == $right.AccountUpn
| where (DeviceEvents_Timestamp - EmailEvents_Timestamp) between (0min .. 60min)
3. アラートチューニングのプロセス
KPI(重要業績評価指標)
- 検出率(Detection Rate): 実際の攻撃を検出した割合
- 誤検知率(False Positive Rate): 誤検知の割合(目標: 5%以下)
- MTTD(Mean Time To Detect): 攻撃検出までの平均時間
- MTTR(Mean Time To Respond): 対応完了までの平均時間
Microsoft Defender XDRでの詐欺ルールの構成
詐欺(Fraud)ルールとは
ビジネスメール詐欺(BEC)、請求書詐欺、CEO詐欺などの金銭的被害を狙った攻撃を検出するルールです。
主要な詐欺パターン
1. CEO詐欺(Whaling)
2. 請求書詐欺
カスタム詐欺検出ルールの例
// BEC検出: 役員を装った外部メール
EmailEvents
| where Timestamp > ago(1h)
| where EmailDirection == "Inbound"
| extend SenderDisplayNameLower = tolower(SenderDisplayName)
| where SenderDisplayNameLower has_any ("ceo", "cfo", "president", "director")
| where SenderFromDomain != "contoso.com" // 組織ドメイン
| where Subject has_any ("urgent", "wire transfer", "payment", "invoice")
| project Timestamp, SenderFromAddress, SenderDisplayName, RecipientEmailAddress, Subject, DeliveryAction
Defender for Office 365での詐欺対策ポリシー
これで前編(セクション1-2)が完成しました。後編では、最も配点の高い「インシデント対応の管理」と「セキュリティ脅威の管理」を解説します。